Interview

インタビュー

ラスベガスの考える介護の3大要素を各分野の専門家からご意見をいただきました。

Q. 認知機能向上効果とは?

医学の分野でご活躍されている医学博士 芦刈伊世子氏にお話を伺いました。

芦刈先生が思うラスベガスの認知機能向上効果とは?

デイサービス ラスベガスは「ただ遊んでいるだけではないの?」という意見を頂戴することがありますが、 この点はどのようにお考えでしょうか?

【芦刈先生】

介護に深く携わっている事業者やご家族から批判はあまり出ないんじゃないですか?批判されている方の多くが介護の経験がない方だと推測します。認知症を専門分野に取り組んでいる人間としては批判に違和感がありますね。私は「よくぞ作ってくれた」と感じています。

例えばお父様、お母様が認知症になり、家でゴロゴロしているのを見るのは子供達にとって辛いものです。このままどんどん進行していくことが目に浮かぶからです。既存のデイサービスに行きたがらないという状況を経験すればラスベガスが何をしようとしているのかすぐに分かると思いますよ。選択肢がある幸福は体験して初めて実感できますよね。

自分のお父さんが歳を取り仕事も辞める。身体の自由も効かなく、認知症の気配もある。どんどん家からでなくなる。そうした姿を見て「なんか父さん小さくなったな」と感じたときのせつなさは体験して初めて分かります。そして、「出歩き、楽しんでほしいな」と思う。でも、そうなってしまったお父さんを外に連れ出すのがどれほど難しいか、 分かってないんでしょうね。自ら「行きたい」と感じてもらうのは本当に大変なことです。

今までは学校みたいなきっちり決められたカリキュラムの固いデイサービスが多かったですよね。もちろんこうしたデイサービスが悪いということではなく選択肢の問題です。学校が好きだった方も大勢いらっしゃるから、学校のようなデイサービスももちろんニーズがあるけど、それを好まないかたもいらっしゃる。私のように学校的なものは嫌だ(笑)という人も多いですからね。だから、どちらが良い悪いという話ではありません。

もちろんギャンブルに使うような遊具にそもそもアレルギーのある方も多いでしょうから、全員が肯定するということがないのは分かります。個性化しているのですから、逆に全員に指示されるはずがありません。

大きな流れで見ると、もともと介護施設が足りず、どんどん出店して増やした時代があり、似たようなものが増えました。そして、現在では個性化の流れになってきましたね。最近ユニークなデイサービスも少しずつ増えてきたのはとても良いことです。

音楽を中心としたデイサービス、将棋を中心としたデイサービス、家電を売りにしたデイサービスもあります。ラスベガスはそれら特徴のあるデイサービスと本質的になんら変わりませんよね。音楽を中心としたデイサービスも見る人によっては「音楽をしているだけじゃん」と言われるかもしれません。でも、何ら悪いことではありません。

囲碁が良くて、麻雀が駄目だなんて全くもって論理的じゃないです。利用者の方の選択肢が増えることはとても良いことですよね。他のデイサービスが駄目なのではなく、それぞれにあった選択肢が一番幸せで効果的だということです。既存のデイサービスだと男性の方があまり行きたがらない状況がありますものね。アミューズメントを中心に据えたデイサービス。とても良いじゃないですか。そうしたものが好きな方はとても喜ばれると思います。

利用者に合ったデイサービス選びに悩むケアマネージャーからも歓迎されると思いますよ。「この方に最適な介護は?」と考えた時に一つの選択肢として大変にありがたい。介護や認知症のことを勉強している人ほどラスベガスの意味が分かるでしょう。

デイサービス ラスベガスには「リハビリ効果はあるのか?」との問合せがありますが、芦刈先生のご意見を頂けますか?

【芦刈先生】

まず何より家に引きこもっている方が外に出るという一点だけでも間違いなく効果があります。リハビリ効果以前に家の外に連れ出すのが大変ですからね。

高齢者の中には「孤独」になっている方がすごく多い。家族は別々に暮らしており、あまり会わない。友人も親戚もだんだんと亡くなっていく。誰がおじいちゃん、おばあちゃんと遊んであげていますか?そして誰が親孝行をせっせとしていますか?という話です。私が担当している認知症の外来さんのなかで、お孫さんが毎週家に来て、外に連れ出して俳句作りを一緒に、というご家族は一組だけですよ。たったの一組。この方は比較的状態が維持されています。家族ですらおじいちゃん、おばあちゃんを楽しませようとしていないのなら、誰がこれをしてくれるのですか?少し認知症が始まると自分で動き出せませんよ、という話です。難しい理屈以前の問題です。人にとって主体的に選択できるものがあることが悪いわけがない。人にとって楽しい時間に効果が無い訳がないんです。

「効果」という点について詳しく教えて頂けますか?

【芦刈先生】

まず楽しく笑って過ごすこと自体が身体に良いです。笑って過ごすことが免疫力を上げることは医学的に数々の研究がなされ実証されています。余命宣告された方が、残りの時間を好きな事をして過ごした結果、寿命が大幅に延びるというお話はそこかしこにありますし、実際に聞かれたことがあるんじゃないですか?笑って過ごす事は免疫力を高め、寿命を延ばす。これは医学的な事実です。

また、歳を経ると脳内、特に前頭前野の機能が低下します。前頭前野が衰えると計画的な行動が弱くなってきます。そこに認知症が加わると物忘れも激しくなってきて行動がおぼつかなくなってきます。前頭前野の老化を抑制するための1つの手段として「笑う」「悔しがる」といった情緒の刺激はとても有効です。

東京の杉並区で10年間にわたり500人の高齢者を調査して「認知症になりやすい人/なりにくい人」といった事を調査したレポートがあります。この調査では認知症を発症した人、しなかった方の生活習慣を詳しく調べています。それによると認知症にならなかった方の生活習慣の1~2位は「楽しい運動」と「ボードゲーム」でした。「楽しい運動」とはダンスなど、本人が楽しみながらやるものですね。2位の「ボードゲーム」は麻雀やトランプ、将棋などのゲームですね。やはり好きなことをしていると状態を維持できるということですね。

認知症が「治る」との誤解は未だ多いですよね。残念ながら現状の医学では認知症を治すことはできません。実際には「維持」するだけでも大変なことです。状態を維持する方法や、発症しにくくなる予防はあっても治すことはできません。リハビリ体操的なものや、計算など脳の活性化には効果があるのだけど、嫌々やるのでは効果は出にくい。何より楽しくないと続かないですよね。若い人も、高齢者も一緒です。

デイサービス ラスベガスがカジノで使うゲームを用いていることに批判的な意見もあるのですが、コメントを頂けますか?

【芦刈先生】

だってお金を賭けていないでしょ?そもそもギャンブルじゃないですよね?ラスベガスのようなアミューズメント。つまり通常ギャンブルに使われているようなものに先入観があり、嫌う方がいらっしゃるのはわかります。ちなみに私も全くギャンブルはしません。実際にお金を賭けて、借金して、というなら話は別ですが、そこで使う遊具自体に罪はありません。

ギャンブルのような刺激を若い脳と老いた脳に与えるのでは意味が全く異なります。老いた脳は前頭前野が機能低下しているので刺激を与えてOKです。

ラスベガスでは実際にお金を賭けるのではなく、架空通貨で遊んでますよね?「お金を賭けずに何が楽しいんだ?」という意見もあるようですけど、さみしい意見だと思います。お金なんて賭けずとも十分に楽しいと思いますよ。みんなが集まって楽しいゲームをしているということ自体がすごく良いことですし、みんなでワイワイとやっているだけでも楽しいですよね。そんなの日常的にありますか?何十年ぶりという方が多いでしょ。人が人として楽しく幸せなことなら、やはり良いことなんです。

新しいゲームのルールを覚えたりする等、新しい挑戦をしていくのもとっても良いことですよね。もちろん認知症の状態によっては新たなルールを覚えることは難しいのですが、昔覚えたゲームのルールは覚えています。昔覚え、楽しかった状態を再び体験するのですから、とても良いことだと思います。

是非今後もがんばって欲しいですね。あと、中野区にも早く作ってほしいですね(笑)私の患者さんに話すと「是非行きたい」という方が何人もいらっしゃるんですよ。

医学博士

芦刈 伊世子

ASHIKARI Iyoko

あしかりクリニック 院長

東京都精神神経科診療所協会 副会長

日本老年精神医学会認定医

認知症サポート医

長崎大学医学部 卒業

慶応義塾大学医学部精神・神経科に入局

国立病院東京医療センター、慈雲堂内科病院、 浴風会病院、慶應義塾大学病院 において臨床経験を積み現在に至る。

芦刈 伊世子